
購入者が、ドアをバタンと閉めるようにサイトを去ることはほとんどありません。商品がどれくらいの重さなのか、どの通貨で決済されるのか、肩まわりが合わなかったジャケットを返品できるのかが分からなければ、ただタブを閉じるだけです。ウェブサイトの翻訳は、とうに単なる言葉の問題ではなくなりました。信頼の問題なのです。世界のどこにいる人でも、迷わず「購入」ボタンを押せる必要があります。
商品ページ:商品説明、仕様、サイズ
商品ページは店舗の販売員のような役割を果たすため、直訳ではなく意味を重視して翻訳する必要があります。「軽量で通気性があり、濡れない」という表現は、英語版では具体的な説明にしましょう。lightweight, breathable, waterproof といった表現に加え、実際の数値も示します。購入者は、あなたが使う言葉ではなく、その市場で使われている言葉で商品を探します。イギリスでは trainers、アメリカでは sneakers と呼ばれます。ドイツではヘッドホンに Kopfhörer がよく使われますが、市場のあるセグメントでは Headset のほうが効果的です。用語を一つ間違えるだけで、商品が適切な検索フィルターに表示されなくなることもあります。
仕様は、素材、重量、生産国、保証といった項目を、すべての言語で同じ構成にそろえて翻訳するのがおすすめです。品番、モデル番号、コードには手を加えないでください。仕様に「シリアル番号:АВ-2231」とある場合、どの言語でも同じ表記にします。
単位、通貨、サイズ表
ここでのミスは、店舗の運営者には気づきにくい一方、購入者にはすぐ分かるため、何よりも高くつきます。たとえばアメリカではインチ、ポンド、華氏で測りますが、世界の大半ではセンチメートルとキログラムが使われています。「120 cm」とだけ書かれていても、アメリカの人には伝わりません。小数点の表記も重要です。ドイツでは 2,5 kg、アメリカでは 2.5 lb と書きます。文章を機械的に翻訳すると、数字まで謎のようになってしまうことがあります。
通貨も同様です。EUでは通常、価格に付加価値税が含まれていますが、アメリカでは税金がレジで加算されることがよくあります。購入者が表示価格と異なる金額を支払うことになれば、合法であっても、だまされたと感じるでしょう。税金や関税を含む最終価格を最初から表示するか、価格に何が含まれるのかを明確に説明するほうが誠実です。
サイズ表には、個別の対応が必要です。ある店の M サイズが別の店では L サイズに相当することもあり、EU、US、UK の表記も一致しません。表を翻訳するだけでは不十分で、サイズ換算が必要です。胸囲、袖丈、着丈などの実寸をセンチメートルで加えましょう。そうすれば、購入者は推測するのではなく、自分の寸法と数字を照らし合わせられます。
カート、決済、配送:信頼されるべき案内文
カートのボタンや表示は道路標識のようなものです。意味が分からなければ、人は立ち止まってしまいます。機械翻訳によって「支払う」が「申し込む」になってしまうこともあり、購入者は注文が完了したのか不安になります。「合計」「配送日数」「〇〇円以上で送料無料」といった表現は、ネイティブスピーカー、またはEC分野に詳しいプロの翻訳者に確認してもらいましょう。
返品、保証、配送条件に関する文章も、特に注意が必要です。これらは法的な意味を持ちます。返品可能期間が「14日」か「30日」かの違いが、申し立てや監督機関への苦情につながることもあります。こうした項目は、意味の近い言葉を選ぶだけで済ませず、対象国の法律を踏まえて翻訳してください。
支払い方法も忘れてはいけません。オランダでは iDEAL、ポーランドでは BLIK が広く使われています。なじみのある支払い方法が見つからなければ、購入せずに離脱する人も少なくありません。決済方法のローカライズは、商品説明全体の翻訳よりも大きな効果をもたらす場合があります。
レビューとユーザー投稿コンテンツ:翻訳するべきか
レビューは社会的証明として機能し、購入者から信頼されています。ただし、すべてのレビューを丸ごと翻訳するには費用がかかり、必ずしも必要ではありません。実用的な方法としては、その市場の言語で役立つレビューを翻訳し、それ以外は原文のまま表示して、言語名と簡単な訳を添えることができます。
大切なルールは、レビューを編集したり「よく見せたり」しないことです。お客様が「サイズが小さめなので、ワンサイズ上を選んでください」と書いたなら、絶賛する内容に変えてはいけません。意味を保つことが大切です。評価をすり替えれば信頼を損ない、国によっては広告規制に違反するおそれもあります。一方、レビューに対する店舗からの返信は必ず翻訳しましょう。返信は店舗の声であり、主要言語と同じように丁寧で分かりやすく伝える必要があります。
写真や動画のキャプションもコンテンツの一部です。商品を開封する様子を動画で見せるなら、字幕やテキストによる説明を加えましょう。コンテンツを翻訳できるだけでなく、聴覚に制限のある人や、音声なしで動画を見る人にも利用しやすくなります。
各市場向けのSEO:購入者の言葉で検索キーワードを設定する
キーワードを辞書どおりに翻訳しても、ほとんどの場合、適切な結果は得られません。国によって購入者の検索方法は異なり、検索エンジンもさまざまです。ロシアでは Yandex、中国では Baidu、韓国では Naver が使われています。サイトを公開する前に、現地のユーザーがどのような検索語を使っているかを調べ、見出し、説明文、URLに反映させましょう。
技術面では、言語ごとに個別のディレクトリまたはサブドメインを設け、どのページがどのユーザー向けなのかを検索エンジンに伝える hreflang タグを設定することが重要です。メタディスクリプションや見出しは、原文をそのままコピーせず、市場ごとに新たに作成しましょう。そうしなければ、検索エンジンに重複ページと判断され、購入者にとってなじみのある情報が検索結果に表示されません。
どこから始めるか:予算が限られている場合の優先順位
予算には限りがあることがほとんどなので、作業の順番が重要です。翻訳しやすいものではなく、どこで売上を逃しているかを基準に考えましょう。一般的には、次の順番で進めます。
カタログ全体を一度に翻訳しようとしないでください。まずはテスト対象の市場を一つ選び、売れ筋商品を翻訳して、コンバージョン率を確認しましょう。用語集も作成してください。サイト全体で統一する用語のリストです。これがないと、あるページの「カート」が別のページでは「バッグ」になり、購入者が混乱しかねません。用語や法律関連の文章を正確にしたい場合は、ECに詳しく、すべてのページで一貫したスタイルを保てる翻訳者に依頼するとよいでしょう。
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